2006年01月23日

私が注目するアスリート その4 陸上競技長距離・佐藤悠基(東海大学)

 今回は高校スポーツに関する問題提起は、ちょっとお休み。
 以前から「私が注目するアスリート」で書こう書こうと思っていた選手が、22日に行われた全国都道府県対抗男子駅伝で走ったので、いい機会だから書く。優勝した長野のアンカーだった佐藤悠基(東海大)だ。
 全国高校駅伝で活躍した長野・佐久長聖高校時代から、怪物扱いされていた逸材。高校3年時には、10000m28分7秒39という従来の記録を20秒も上まわる驚異的高校記録を作って話題になったから、陸上ファンなら知っている人も多いだろう。今年の箱根駅伝でも、3区を走って区間新記録を作った。だから、今さら書く必要もないのだけれど、走るたびにホレボレさせられるから、あえて書く。
 まず、ホレボレさせられるのは、理想といえるフォームだ。上体の軸がまったくぶれない。無駄な力は使っておらず、それでいて伸びたストライドがリズムよく回転する。
陸上競技は、短距離も長距離も脚力が注目されるが、実は全身の筋肉を使っている。腹筋、背筋、腕の振り、体のバランスを取る筋肉…。足を高速回転させるには、それらの筋肉を総動員しなければならないから、並の選手はどうしても体の軸がぶれる。しかし、佐藤悠基はぶれない。生まれもっての強靭な筋力やバランス感覚があるのだろう。その余裕があるから、体に余分な力を入れなくても足を速く前へ送り出せる。だから、100mを18秒ぐらいの高速で走っても、ジョギングでもしているように見える。
それともうひとつ凄いと思わせるのはメンタル面だ。といっても熱血漢というわけではない。むしろクールだ。
知り合いのライターから聞いた去年の全日本大学駅伝の予選会でのエピソード。関東の予選会は、各大学の選手8人の合計タイムで代表が決まる。東海大は予選通過レベルのタイムを出していたが、佐藤は足に違和感があったということで途中棄権し、東海大は出場の権利を失ったという。佐藤は1年生だ。出場権を得るため、先輩たちと走る手前、普通なら違和感程度で走るのを止めるわけにはいかない。箱根駅伝をはじめとする学生スポーツには、「体がダメになっても母校のために頑張る」という自己犠牲の論理がまかり通っている。考えてみれば実に非合理的だが、学生スポーツ界はタテ社会。変だと思っても、その常識には従わなければならず(体育会系の選手たちには、そうした体質があり、進んで受け入れている部分もある)、つぶれていく選手も多い。
しかし、佐藤はそんな根性主義よりも、アスリートとしての自分の体を優先した。佐藤は誰もが期待する逸材だし、最近の大学体育会は昔ほど理不尽なところではなくなっているから、この行為はとくに問題視されなかったようだが、周囲の目は厳しくなる。ふがいない走りはできないプレッシャーにもなる。だが、佐藤は箱根駅伝で快走を見せた。周囲が何も言えないだけの結果を出したのだ。
都道府県対抗駅伝で見せたのも、クールな走りだ。タスキを受けた時、2位の兵庫とは1分近い差があった。燃えるタイプの選手だったら、さらに差を拡げようと頑張るかもしれないが、佐藤は、どの程度のペースで走れば抜かれないかを計算して走っているように見えた。追いかける兵庫の細川には少し差を詰められたが、まったく危なげない走りでアンカーの務めを果たした。
この冷静さが頼もしい。今後の日本男子長距離界のエースに育つ可能性は大だと思っている。
posted by アイザワ at 09:56| Comment(4) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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